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2010.08.30 *Mon*

【SS】思いの形-前-【なつまつり】

sasie-zen.jpg

シリーズ6。長いので前後編ですー。続きにっ。




奨められて入った店の四人席で、日向は五十嵐の隣、音無は直井の隣に。そして日向の目前には直井が対面する形となった。どう考えても遠ざけられている気がする。目の前の直井がラテをストローでじゅうじゅうと吸い上げながら、相変わらず日向を剣呑な目付きで睨んでいた。一方の五十嵐と音無は時折チラチラと直井の様子を気遣いつつも何やら和やかに話し込んでいる。
やばい、正直言いにくい。まさかこんなタイミングでこれ程厄介なお邪魔虫が介入してくるとは思わなかった。膠着状態のまま気まずそうな二人を見兼ねたのか、音無は思い出した様に話題を振った。

「えっと…そういやみんな紹介、まだしてなかったよな」
「五十嵐さんの事は兼ねてからよく知っています。この愚民の事は特別知りたいとも思いません」

間髪入れずバッサリと話の腰を切り捨てそっぽを向いてしまった直井に「そう言うなって」と五十嵐は宥める様苦笑した。音無程では無くとも彼に関しても随分直井の信頼を得ている様子だった。渋々と言った感じに、尖らせていた口元をほんの少し緩めた。

「コイツは日向、五十嵐には話したと思うけど、ほら、病院で言った」
「ああ、花火大会の日に会ったっていうヤツだな。さっき名前呼んでたの聞いたから、なんとなくわかった」
「…以前から音無さんと親しいんですか?」
「二週間ぐらい前に知り会ったばっかりだけど、良いヤツだよ。俺の不注意で怪我させちまったんだけど、律儀にお礼してくれたりさ。」

音無としては日向の人柄を評価しての言葉だったのだろうが、直井としては益々日向への不信感を募らせる言葉に過ぎなかった。と、それはなんとなく、直井の性格をよく知る五十嵐、そしてあんな出会い方を果たした日向にも容易に察しが付いていた。音無、お前どれだけ鈍感なんだ…二人同時に思った事には間違いない。

「フン。どうせ音無さんの厚意に付け込んで、怪我の侘びを体の良い誘い文句に使ったんだろう」
「なーおーい。なんでお前そう他人につっけんどんなんだよ」
「音無さんは気付かないんですかっ?コイツの音無さんを見る目!僕は見てたから解ります…只の恩人に対する気持ち以上のものを持ってること―――い、いひゃいっ!」

直井は音無にまくしたてる様向けていた言葉を唐突に止めた。音無に頬を抓られたのだ。

「お前、昔からすぐ人に突っかかるの悪い癖だぞ。」
「ひ、ひゃってぇ…」
「ごめんな日向、こういうヤツだけど、俺の親戚の直井。仲良くしてやってくれたらうれしい」
「あ、あぁうん、お前が言うなら…うん」

出来るだけ善処する、とまでは暗に指し示しただけに言葉を留めた。どう善処しても上手くやっていける気が既にしないのだが気のせいか。隣の五十嵐がご愁傷様とでも言う様に苦笑した。やはり彼は直井の性格をよく解っているらしい。客観的に見る事が出来る分、下手したら音無よりもよっぽど話が合うかもしれないと日向は思った。

「で、隣のそいつはもう説明することもないかもしれないけど。高校時代からの友達で五十嵐。日向に前、飯つくってくれるヤツ居るって言ったろ」
「あー、やっぱりそっか。」
「知ってたのか?」
「買い物袋提げて歩いてたし、なんとなく…なんか、さっきは悪かったな。よろしく、五十嵐」
「気にしてねーよ。こちらこそ」

こちらは直井とは違い特別癖もなく、かと言って無個性と言う訳でもなく。
ただ、非常に空気の読める出来た人間だなと率直に日向は思った。先程も上手く場を諌めてくれたのは結局五十嵐だったし。しっかりしている様に見えてどこかぼんやりしている音無の欠点を補っている存在の様な。

「…そういや日向、俺に用あったんだっけ?」
「あー、うん。でもまぁ今じゃなくても良いかなぁって、気も――」
「……なんだ貴様。僕や五十嵐さんが居ると言えない様なことなのか?」

どうにもチラチラと直井の様子を伺っていたのがバレたらしい。真正面の深緑が日向の視線を射抜かんとばかりに細く鋭くそぼめられている。

「…そうなのか?なら今度に改めるけど…」
「い、いやっ!こういう話は早い方が良いと思うし、今言っとく…」

今はぐらかすと今度は後が恐そうだとも思ったし、こっちは大丈夫とは思うが―――音無と懇意にある五十嵐にも妙な形で疑われたくはない。日向は携帯を取り出し、ユイからの録音メッセージを音無に直接聞かせつつ、昼頃事務所で渡された――職場の待遇、概要や条件が記載されている用紙を手渡した。意外にも直井は、音無が持つ用紙を横から興味有り気に覗き込むだけで、日向が警戒する様な反応は返ってこなかった。ただ、隣に座る五十嵐だけが、あまり良い顔をしていなかった。…気付いた者も居なかったが。

「そんなに悪い話じゃ無いと思うんだけど…多少は掛け持ちも大丈夫っつってくれてたし。」

期待と不安の入り混じった声で「…どうだ?」と聞いたら、暫し思案した後に音無は顔を上げた。

「うん。条件とか、職場までの足も問題無いと思うし。俺は全然構わないよ」
「―――えっっ?」

つい、間の抜けた声が出た。まさかそんな二つ返事でOKを貰えるとは思ってなかったからだ。むしろ、例えば今の仕事の兼ね合いや時間の都合だとか、色々問題が浮上するのではと構えていた。もし長く働いた所を辞めるなら、当然これまでの恩赦や付き合いもあるだろうし――只でも多忙な生活をしている音無のことだ。だから当然の様に疑問も湧いた。

「ええと…でも、確か音無、昼もたまに働いてなかったっけ?そっち大丈夫かなって…」
「特には問題無いけど?つーか俺、どっちかっていうと夜の方が多く働いてる感じなんだよ。むしろ丁度捜そうかって考えてた所だったから、有り難いくらいかも」
「さ、捜してたって…」

…何かと言われれば、ハッキリしないのだが―――とにかく、自分の認識との食い違いを漠然と感じつつ、何とも返し損ねていた日向に代わり、それまで黙って話を聞いていた五十嵐が不意に口を開いた。

「…音無。お前もしかして、まだこれ以上仕事増やすつもりなのか…?」

えっ、とまた短く声を発して、五十嵐の――僅かだが不満の入り混じった複雑な表情を伺い見た後、日向は音無に視線を戻した。てっきり自分の考えと同じ様に、どこかしらのバイトを辞めてから、改めてその時間帯にシフトさせるものかと――

「そうだけど…別に他を辞めないと働けない程じゃなさそうだし。あぁでも、日中なら初音に会ってやる時間が減るかな…悪い、五十嵐には世話かけちまうかも」

独りごちる様に音無は言葉を続ける。話を持ち掛けたのは自分だが、流石にそれはどうなのだろうかと日向は思った。今働いている仕事の他にも更に妹の見舞いや勉学もあって、これ以上増やしてしまったら本当にいつ音無は休めるのだろうかと。
とは言え実際彼自身がきちんと考えて大丈夫と判断し、そう言っているのかもしれない。ならば自分がそこにあれこれと口を出すべきでもないのかも―――。
考えあぐねている日向の隣で、五十嵐が一つ、深く嘆息した。

「初音もでも、お前の話ほんとに気に入ってるみたいだしさ。暇な時で構わないから、また頼めたら――」
「…音無、あのな、」

五十嵐が僅かに強めの口調で何か言いかけたその時、空気を読まない電子音が突然鳴り始めた。どうやら直井の物だったらしく、慌てて懐から携帯を取り出し呼出しに応じた。手短に話を終え通話を切ると、話の途中にお邪魔してしまってすいません音無さん、と申し訳なさげに向き直った。

「そろそろ僕、戻らないといけないみたいで。母と健人も一緒に来ていたので――」
「ああ、弟さんたち一緒だったんだ。悪いな、なんか付き合わせちゃって」
「いえ。…あの、音無さん。良ければ少しだけ抜けてもらえませんか?一目でも母に、音無さんの元気な所を見せておきたいと思いまして」

直井の母は音無の叔母にあたる。母が亡くなって直井の実家に引き取られてからこれまでに、音無が世話になった人間の一人だ。

「…叔母さんにはお世話になってるもんな。話の途中で悪い、五十嵐。日向も。ちょっと挨拶だけして来る」
「ああ、待ってるよ」

音無と直井に手を振り見送ると、五十嵐と日向は二人きり取り残された。つい先程初めて会った様な相手と世間話がそうそう弾むはずもなく、暫し気まずい空気が流れ―――先に沈黙を破ったのは五十嵐だった。

「…驚いただろ、流石に」
「え?あ、あー…直井のことか?確かにあれは…」
「それもあるけど。音無の事だよ。お前気があるんだろ?」
「うぇっ!?」

意表を突かれ素っ頓狂な声を上げて日向は五十嵐を見た。なんでわかったんだと顔に書いてある様で、つい五十嵐は笑ってしまった。

「なんとなく、な。お前が買物袋一つで俺と音無の間柄把握した、みたいなさ。直井もあれで勘は働くから」
「…悪かったな、わかりやすくて」
「別に悪くねーよ。…あいつ、ああいう性格だろ。気ィ持たれる事も少なくなかったんだ、昔から…あぁいや、」

基本女子だけどな?と、五十嵐は付け足した。そうそう音無が男にモテたなんて聞いてもそれはそれでショックなので日向は内心で胸を撫で下ろした。

「…ただ、そういう色恋沙汰に関して、これまでまるで上手くいった試しが無い」
「直井が居るからじゃねーの?あいつ音無のこと崇拝してるみたいだし」
「はは、そうかもな。けど直井だって、始終ベッタリって訳じゃない――音無には、心に他の誰かが付け入る隙がねーんだよ。気持ちが特定の一人にしか向いてない。だから自分に向けられる好意にも酷く疎い」
「――…」

そういえば――自分の時にも話した様な、恋人が居るかとか好きな人は誰かとか、そういった浮いた話を、音無自身に関しては殆ど聞いたことがない。ただ――五十嵐の言う特定の一人が誰なのか、日向には分かる気がした。

――音無は、最愛の彼女にだけ総てを捧げているのだ。

「…初音ちゃん、か?」
「ああ、聞いてたんだっけな、日向は」
「あいつとカフェ行った時に…すげぇ大事にしてるんだってのは、ちょっと話聞いただけの俺でもよくわかったから」

一緒に連れて来ようと言った時の音無を思い出す。震える声で、ありがとうと小さく細く紡いだ、頼りなさげに揺れる肩。
最初会った時は運命だと思った。なんてしっかりした、出来た人間なんだろう、なんて。けれどもあの時の彼はまるで違っていて、今にも崩れそうで、倒れそうで。そんな姿を見せられたら――いやむしろ、見せてくれたからこそ。支えてやりたいとも思ったのだ。

「…誰だって経験や歳重ねることで、しっかりした自分作ってくもんだけど。音無の場合は特に顕著なんだよな。あいつは多分、一番多感な年頃に両親失って、一人で初音ちゃんを支えなきゃならなかった。幾ら親戚が優しいっつってもな、子供二人の引取に際しちゃ面倒ないざこざはあったらしいぜ」

五十嵐は淡々と言葉を続けた。普通なら親を失ったばかりの子供は聞く必要の無い生々しい問題や、中には邪魔者の様に扱う声もあったんだとか。それらを総て音無は一身に受け止めて来たのだと。10代初期なんて―――それこそ初音と同じで、まだ親が恋しい頃で、学校で友達と勉強して元気にはしゃいで帰って、母親に報告をして、たまにちょっとやんちゃをして怒られて、日曜日には父親が遊んでくれる。少なくとも日向や五十嵐が知っているのはそういう家庭だった。幾許かの経済や家庭事情差はあれど、親の愛は全ての子供に等しく平等に注がれるべきなのだ。

「…まぁ、だからっつーかな。音無が、初音ちゃんを大事に思う気持ちはよく分かる。心から信頼出来る、唯一の肉親なんだろうから…自分省みず無理ばっかするのも、全部初音ちゃんを少しでも長生きさせてやりたいからだろうなって。俺は身近で見てきたから、なおのことよく解ってるつもりだ。初音ちゃんが大事なのは…俺も同じ」

だからな、日向。不意に話しの矛先が自分に向いて、聞き手に徹していた日向は僅かに慌てた。

「…音無から、今度初音ちゃん連れ出してやろうって話したって聞いたけど。出来れば…俺はそれ、止めてほしい」
「え…っ?」

音無を救いたいと言う気持ちから出た言葉をまるごとひっくり返さんとする突然の言葉に、日向は瞳目した。





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キャラ多いと何が大変って感情描写が単純に多いので大変なんですよね、ううぅ伝わってるといいな~~

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