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2010.08.26 *Thu*

【SS】なつまつり5【日音】

sasie5.jpg

唯一悔やむべきは前の挿絵と構図被りしちゃったことでしょうか
続きにー!



若い男女や会社帰りの人々が行き交う週末の駅地下街。学業や仕事が一段落ついてさぁ遊びに呑みに繰り出そうかという、夜闇に染まったこの時間には些か不釣り合いな熱気に街は活気づいている。
以前の自分なら一人でこんな場所には来なかった。否、今だって用事もなければ別段長居したい訳ではないのだ。数メートル前方を、カップルさながら仲よさ気に談笑しつつ買物袋を提げ並んで歩く二人の男性の姿が気にならなければ。

(…なんで俺、こんなストーカーまがいな事してるんだ…あぁくそ俺のばかあほ腑抜けのイケテナイチキン!)

情けない話だか、目の前の楽しそうな二人の間を割る勇気など日向は持ち合わせていなかった。ただの男友達だろう、もしかしたら前に言っていたよく飯を作りに来てくれるという友人のことかもしれない、何も隠れる必要なんて無いんだけどでもだけれど気になるんだから仕方ないじゃないか!








そもそも事の発端は数日前の仕事先まで遡る。シフトが終わりロッカールームに戻り携帯を開くと、知らない番号からの不在着信と留守録が残されていた。不審に思いつつ録音メッセージを再生すると若干騒がしい声が鼓膜に直接響いた――ユイの声だ。番号は先日のカフェでカードを作った際に知ったのだろう。ばかおまえそんなでかい声で喋らなくても聞こえるっての。一度声を無くした人間のものとは思えない元気の良さだと一人悪態付きつつ用件を聞いた。

『この前お店に来てくれたじゃないですか。そのとき、うちの店長が先輩とお友達さんのこと気に入ったらしくてですねっ。今度丁度、姉妹店がリニューアルオープンする予定なんですけど、人手に余裕あるから良かったらお二人で働いてみませんかー?っていうスカウトの電話寄越させてもらいましたぁっ。ほら先輩、あの人のこと好きなんだよねっ?一緒のお店で働けたら、仕事の帰りに公園の暗がりであんなことやこんなこ』

後半の―――先が容易に想像のつく下世話なメッセージは無論最後まで聞かず(というかなんだか見透かされた様で日向自身がいたたまれなくなったので)メッセージの再生を停止した。一体全体どういうスカウトの仕方だ。
とはいえこれは願ってもない誘いだと思った。正直カフェで働いた経験なんて無いが、とりあえずは仕事中もずっと音無の側に居られるのだ。今ある昼のバイトは先日なんとなしに始めたばかりの職場だし辞めた所でそう問題でもない。ただ音無の方はどうだろうか、今でもギリギリ休日が取れるかどうかと言う生活を自分から進んで営んでいる彼が、そう簡単に今の職場を止めて新しい所に就く事を良しとしてくれるだろうか――。

とりあえず日向はユイに―――正しくは彼女が働く店にすぐさま直接連絡を取り、給料や待遇を詳しく知りたいから今度一度伺わせて欲しいと返事をかえした。音無に話を持ち掛けるにしても詳しい話を聞いた後の方が効率は良い。条件によっては今よりも良い職場に就けるかもしれないのだし。

そうして当日来る様指示されたのは、比較的都内に位置するビルの一角に入っている事務所。普段引きこもってばかりで、すっかりビニールシートの下に持ち腐れていたバイクを久々に引っ張り出した。休日前夜の満員電車にわざわざ揉まれるのも面倒だったからだ。
事務所へは迷わず到着し、スタッフとの話も滞りなく終えた。詳細が丁寧に記された書類を鞄に納め、後日返事しますと挨拶しビルを後にした。すぐにでも音無と話をしたい気持ちはあったが、生憎圏外なのか通話中なのか携帯は繋がらなかった。また後でかけ直せば良いだろうと思い、駅前まで出たついでに晩飯も買って帰ろうと近場の店を見て回っていた―――正にそんな時だった。音無と、隣を歩く茶髪の青年を見付けたのは。

二人が手にしている買物袋には地下街に入っているデパートの印。見るからに夕食の買い出しといった風体の食材や生活雑貨が遠目に見えた。なんだよまるで夫婦みたいじゃないか…!日向の被害妄想である部分を差し引いたとしても二人は仲睦まじく見えた。音無の笑顔には隣の青年に対する信頼感が表れている。長い付き合いなのだろうという事だけは間違いなくて―――、一方の日向はといえばまだ知り合って数週間で彼の事なんかほとんど知らない、赤の他人の粋をまだ脱し切れていない様なもので、こうして街中で見掛けたからとて気軽に声をかける事も憚ってしまう。その程度の。

(…そうだよな、俺はもっと…)

音無の事を知りたいと、知るべきだと思った。こんな建物の隅からこそこそ見ているだけじゃなくて。あの夏祭りの夜みたいに、ほんの少し勇気を出して。だってそれで、音無は、振り向いてくれたじゃないか。そうだ、俺は音無の為に生まれ変わるんだ。いざさらば駄目な俺!

決意も新たに一歩足を踏み出した日向の肩が、背後から不気味なほどそっと静かに叩かれた。

「―――お前、何いかがわしい目で音無さんのこと見てんの…?」

え、と振り向く間もなく、肩を叩かれた側の腕を突如捻りあげられて疑問の声より先に悲鳴が上がった。ちょ、痛い痛い痛い!なんとかして頭だけ後ろに向けたら半眼で日向を睨みつける見知らぬ青年の姿があった。深緑色の髪と瞳、女性と見間違えそうな端正な顔立ち。だが華奢に見える体躯に反し日向を押さえ込む力は意外にも強かった。

「な…っなんなんだよお前一体!」
「それはこっちの台詞だっ。さっきからいやらしい目でジロジロと…おまわりさん怪しい人でーす!」
「いやらしくねぇしってか話を…!あいってえぇっっ!」

突然の騒ぎ声に何事かと行き交う人々の視線が集まる。ともすれば前方を歩いていた当の二人――五十嵐と音無もそちらを振り向かない筈が無く。

「えっ、日向―――直井っ?」

音無が二人の姿を確認するなり、アッと口を開き名を呼んで駆け寄ってきた。続いて既に呆れ顔の五十嵐も。すると人が変わった様に緑髪の青年はぱっと顔を綻ばせた――無論日向はガッチリと押さえ込んだままに。

「音無さん!お久しぶりですっ」
「い、いやうん、確かに久しぶりだけど…えっと、それは…?」
「音無さんを猥褻な目で見ていた只の変質者です」
「だから違うっつーに!!」

…猥褻と言われた事に関し完全に否定しきれないあたり、後ろめたい気持ちは燻っていたが。

「嘘を付くな。病的な目をしていたぞ貴様」
「そんな事…!い、いやでも、そんなにだったのか…?俺…」
「病的?日向、どっか調子悪いのか?」
「見事に会話が噛み合ってないな…つーか直井、人が見てるから。あと多分そいつ音無の知り合いだから」
「音無さんの…?」

一連の会話から事情を粗方察したらしい五十嵐が、いきり立つ青年――直井を諌めようと声を掛けた。が、それでも直井は訝しげな視線を日向に向けたままなかなか拘束を解かない。今になってどうかしましたか、と駆け寄ってきた警備員に、只の友達同士の喧嘩です、すいません、等と常識人である五十嵐が申し訳なさそうに頭を下げた。

「直井。なんでそうなったかよく解らないんだけど、そいつ俺の友人なんだ。離してやってくれないかな?」
「…音無さんがそう言うなら」

正に鶴の一声である。音無が直井を宥めると、彼はあっさり日向の拘束を解いた。ようやっと解放された腕を摩りながら日向はふぅと一息付き、ふと我に返って本来の目的を思い出した。

「…っと、そうだ。俺音無に用あったんだけど、携帯繋がらなくて…そしたら丁度駅で見掛けたからさ、声掛けようとしてた所だったんだよ」
「俺に?」
「うん。そうなんだけど、えと、その前に……」

音無の背後で今だコチラに睨みを利かしている直井が気になって日向は続きを躊躇してしまった。音無と彼がどういった間柄なのかは知らないが、ともかくこのタイミングで「一緒の職場で働かないか」なんて持ち掛けたらどんな反応が飛んでくるか解らない。どうするべきかと思案していたら、五十嵐が気まずそうに頭を一つかいた。

「あー、と。なんでも良いんだけどさ、とりあえずどっか、ゆっくり話できる店でも入らないか…?」

どうやら会話が会話だっただけに、完全に体の良い見世物になってしまっていたらしい。野次馬のフラッシュと視線が痛い。良い所知ってるから、と気を利かせた空気の読める茶髪の男に、よろしくお願いします、と日向は申し訳なさげに小さな声で頼み込んだのだった。






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イケテナイチキンがわかった人は僕と握手(笑)
直井に日向苛めさせるの楽しいですね。五十嵐絡めたらどうなるもんかなーと思って書いてたけど、音無さんが天然で五十嵐が見事なまでの苦労キャラになってしまった。五十嵐マジ苦労ソング。ごめんね五十嵐さん。でも彼とても体の良いツッコミ要員だと思います。

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