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2010.08.26 *Thu*

【SS】なつまつり4【日音】

sasie4.jpg

支部だけでこっちに上げそびれてたので二話連続でいきまーす



両親は小さい頃に離婚した。音無がまだ10歳の時に。そしてその年に初音が生まれた。母はシングルマザーとして二人を甲斐甲斐しく育ててくれたが癌を発症し入院。気付いた時には全身に転移していてもう手遅れだと告げられた。夏の終わりに冷たい風が吹きはじめた季節、母は静かに息を引き取った。

その後暫くは母方の親戚に世話になった。幼い兄妹の面倒を良く見てくれる優しい人達ばかりだった。ただそこはこれまで由緒正しく続いてきたお家柄とかで、叔父がやたらと息子―――特別長兄に対し厳しかったのをよく覚えている。名は直井と言った。長兄として育てられた文人という子供は、親戚の中でも特に昔から音無に懐いていた。(歳が比較的近かった事と、音無が根っからの兄貴分であった為だろう、と音無自身は思っている)とにかく、生い立ちの割に生活面で困窮した事は無かった。

音無が一人暮らしを始めたのは、初音の入院が決まる数年前のことだった。流石に二人分もずっと親戚の家にたよりっぱなしなのも悪いからと―――中学時代は近所の古びた飲食店に住み込みで働かせて貰っていた。元々人好きのする性格のおかげで周りの評判は良かった。…なるべくしてなった性格、という方が正しかったかもしれないが。
高校生になってからはバイトを始め郊外の安いワンルームに移り住んだ。同時期に初音の入院が決まったことをキッカケに医療の勉強を始めた――それでも世話焼きな親戚と中学時代住み込ませてもらった飲食店の老夫婦が何かにつけあれこれと工面してくれるものだから、ここでもまた温和で外向的な性格が幸いして、周囲が言うほど身の上を特別不幸せと感じる事も無かった。卒業を迎えるとやはり教師の奨める学校へ進学はせずに、引き続き医療の勉強をしたいと相談を持ち掛け、そうして今に至る。

「…初音?入るぞ」

コンコンと控え目に病室の扉を叩き中に入る。ベッドで静かに本を読んでいた小さな影が音無に気付き「お兄ちゃん」と呼んだ。と、それに続く様にしてベッドの向こう側からもう一人大人の影がひょこりと覗き「音無」と声を掛けてきた。

「…五十嵐!見舞いに来てくれてたんだな、学校は?」
「日数出てっから大丈夫。帰りに駅地下寄ろうぜ、今日はお前んち寄れるし」
「そか。良かったなー初音、五十嵐が来てくれて」
「うんっ。ずっとお話してもらってたんだよー。五十嵐さんのお話すっごくおもしろいの」

褒めても何も出ないぜーと、五十嵐と呼ばれた青年は初音の頭をぐりぐりと撫でつつ笑った。
彼は音無の高校時代からの同級生であった。同じクラスでなんとなく気が合って、初音と音無の身の上を知ってからは彼も何かと世話を焼いてくれる様になった。大学生となった今はこうして入院生活が退屈な彼女の為に好みそうな雑誌を買ってきてくれたり、今日みたく見舞いに訪れ外の話をしてくれたり。音無は音無でバイトと勉強の両立が多忙だったから、五十嵐の存在は本当に有り難いものだった。日向に飯を作りに来てくれる知り合いが居ると話したのは他でもない五十嵐のことだ。

「あ…そうだ初音、これ」

日向の名前でふと思い出し鞄の中を漁ると、リボンがあしらわれ綺麗にラッピングされた小袋が出て来た。カフェで初音にと選んできたものだった。

「え、えーっ!なにこれ、あけていいの?」
「ああ、いいぞ」
「…わぁっ、くまさんだ!かわいーっ!」
「ん、初音に似合いそうだなって」
「へー、ネックレスかぁ。音無良い趣味してんなー。どこでこんなの見付けてきたんだ?」
「最近知り合った奴に紹介して貰った店が良いとこでさ。ほら…花火大会の日に、俺が病院付き添った、」

音無の言葉に「ああ、あの時の」と五十嵐が思い出した様に相槌を打った。あの日花火大会に同行していたのは五十嵐だったのだ。ただ―――二人が花火を見たかったというよりか、初音がどんなものか知りたいというので、じゃあ時間もあるしということでデジカメを片手に繰り出した。映像記録とはいえ臨場感くらいは伝わるだろうと。が、途中慣れない道を通ったら日向と遭遇、怪我をさせてしまったから、撮影は五十嵐に一任して日向に付き添った――というのが事のあらましだった。

「えっと…花火大会の日に怪我しちゃったってひと?」
「そう。で、俺に申し訳ないからーって、律儀に礼したいって、一昨日オススメの店連れてってくれたんだよ。」
「そっかぁ。いい人なんだね、だからお兄ちゃん今日なんか楽しそうなんだ」
「えっ?」
「だよなー、俺もそう思ってた。なんか機嫌良いなって」

思ってもみなかった二人の言葉に音無は言葉を続けられなくなってしまった。ただ、そう、楽しかったしうれしかったし、それを伝えたいとは思っていたけれど、何故だか見抜かれた事が気恥ずかしくて、話を微妙に逸らす感じですげ替えた。

「そ、そう、それでさ。初音も連れて来ようなって話もしたんだ。店に日向の知り合いが居て」
「え、ほんとうに?」
「ああ。今度体調が良くて、俺とかあいつも都合着く日見付けて、出来たら近い内に一緒に行こうな」

音無の申し出に勿論初音は喜んだ。嬉しそうに笑いながら「五十嵐さんも一緒が良いな」と言ったら「都合が着いたら行きたいな」と五十嵐はつとめて無難な答えを返した。初音の外出が難しい事をよく理解してもいたからだ。だから迂闊に、どこかへ連れていってやろうなんて、五十嵐には言えなかったのだが。

(その日向って、奴――)

無神経と言えば聞こえは悪いが――とにかく、これまで音無の側には居なかったタイプの存在だと思った。彼の事は、高校時代からにかけてはおそらく他の誰よりよく知っているという自信が五十嵐にはあった。無論同情や憐れみだけで音無の側に居る訳じゃない、彼の本質的な優しさや強さが、五十嵐には心地好かったからだ。

「…五十嵐さん?聞いてる?」
「あ…あぁごめん、何だっけ」
「だから、お前も行けたら良いなって話だよ。俺も…お前に日向のこと紹介したいし」

五十嵐は苦笑した。なんだか娘に彼氏でも紹介された様な妙な気分だった。お前、自分がどんな顔して笑ってるか知らないだろう、心の中でだけ音無に問い掛けて初音の頭をまたひとつ撫でた。

初音の病気は不治だと告げられている。あとどのくらい今の状態が続くか解らないという事も。それはあくまで確率的な次元の推測でしかない。けれども、担当医の言葉は何よりも重みがあるものだ。それはおそらく医師を目指している兄の音無が、一番よく理解していて――――

『…花火大会?』
『そう。初音が見たいって…だから付き合って貰えたら嬉しいんだけど』
『いいけど…それならテレビとかでも見れないか?今は中継なんかもよくやってるから…お前、ここんとこ働き詰めだろ。この前過労で倒れたじゃ…』
『――俺は元気だよ、初音に比べれば全然。中継でも良いけど…この前デジカメで撮ったやつ、初音が喜んでたから。嫌なら…いいんだけど』
『…はぁ。分かったよ、お前、初音ちゃんのこととなったら聞かねーしな』
『ん…ありがとな、五十嵐』

結果的に――自分が居たから無事花火大会の映像は残せたし、日向という青年と出会った今の音無の笑顔がある。
五十嵐は極力先の短い初音に無理はさせたくなかった、そして何より――妹に熱意が全て向いてしまうぶん自分のことに殊更無頓着な音無にも。日向という青年との出会いが、この先の音無に吉と出るならば構わない。ただ…そうでないのなら。

「…そうだな、俺にも会わせてくれよ。その日向って奴とさ」
「おう。フレンドリーな奴だから、お前とも気が合うかもな」

音無の他意も邪気もない笑顔に、五十嵐は穏やかに笑い返した。
願わくばこの兄妹にとって、その出会いが必ずしも良いものであったなと、後に言える様に。




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五十嵐と初音と音無の話でした。この段階の音無さんにとっての初音は初音マジ初音溺愛状態なので五十嵐さんは結構やきもきしてる。初音ちゃんも勿論好きだけどもっと自分大事にしてくれないかなって常に複雑に心配な心境。
このシリーズ結構通しで読んでくださってる方がいてうれしいです^ω^*あざっす!

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